世界的な脅威と見なされた存在を排除する為、星が助けを求めて叫ぶ声を聞いて
"創造神"の意志のもと、その世界に介入させられる機構。
数多ある世界の存続を護る為の存在。
その存在を知る者からは『抑止の代行者』『夢護り』と呼ばれる、精霊に近いモノである。
抑止の為の世界渡航には誰かの夢を伝う必要があり、夢を見ない世界には現れる事が出来ない。
夢を見ない世界は"創造神"の観測からも外れており、故に出現する事が出来ないようだ。

***

ある世界に、おてつだいが好きな妖精がいました。
妖精は身近な人達のおてつだいをするのが好きでした。
おてつだいをする事が、妖精の仕事でした。
おてつだいをして喜んでくれる隣人達を見るのが、妖精の趣味でした。
おてつだいをする事でしか、妖精の存在価値はありませんでした。

おてつだいは、いつまでも続きませんでした。
いつしか妖精がおてつだいを続けた結果、
その世界からおてつだいは消えてしまいました。
繁栄と停滞を迎えた世界に待っているのは緩やかな滅びでした。

滅びゆく世界の、最期のおてつだいを終えた妖精はやがて
神さまに導かれて、夢の世界へ旅立っていきました。

***

元々は停滞した世界の中から選定され、摘み取られた儚い存在。
それはすぐに夢の浅瀬に溶けてしまう様な脆い状態だったが
無秩序で独創的な子供の夢と結びつく事で自我を得て、守護者となった。
その出自が故に、言動も行動も何もかもが突拍子無く支離滅裂。
まさに子供の夢の様な"自由さ"を持つ。時に奔放過ぎる事もあるが……

世界の終焉をその目で見届けた為、擦り切れた心は何も感じる事は無い。

夢世界に巣食い、人の心を惑わし精神を弄ぶ悪魔に対しての
最大のカウンターとして投入される事が殆ど。
それは、守護者の使命を徹底する冷たい心には
悪魔の甘言や誘惑も何もかもが意味を成さない為である。


或いは、悍ましい化け物や正気を疑う様な悪夢を討ち祓う為に。
誰かの安らかな眠りと夢を護る為に。
月の兎は今日も、誰かの夢の中で眠らずに戦いの日々を続けている。


夢見深度：極高(現実世界への覚醒は不可能)
個人の夢(願い)：いつか現実で可愛い服を着て、静穏な生活を送りたい